日本国外にいる日本人、在外邦人は134万人います(令和3年10月1日現在)。この10年間で15万人以上増加しています。選挙権を持つ18歳以上は、100万人強と推定されます(直近の年齢別在外邦人は公表されていません)。
在外邦人が日本の選挙で投票するには、事前に在外選挙人名簿への登録が必要になりますが、この登録があまり進んでいません。
昨年10月に行われた衆議院選挙では、在外選挙人登録をしていた人、つまり投票権を持っていた人は96,664人。登録率は10%弱。さらに、その中から投票に行った人は、比例代表選挙で19,531人。投票権を持っている人の中での投票率は20.21%、在外邦人の有権者全体での投票率は、わずか2%程度でした。
登録率も投票率も低い要因として、在外邦人の選挙への関心の低さが指摘されていますが、当事者であった私の実感としては、手続きの煩雑さと時間がかかることの方が大きいと考えます。
在外選挙人名簿登録申請はこれまで以下のような流れでした。
① (出国時申請)国内選挙管理委員会に行って登録申請する(出国後に在外公館 に「在留届」を提出<インターネットでも届出可>)、(在外公館申請)在外公館に行って登録申請をする
② 届出を受けた在外公館は外務省にデータを送付
③ 外務省は、日本国内の最終住所地の市区町村の選挙管理委員会に申請書類を送付。
④ 書類の届いた選挙管理委員会は、在外選挙人証を発行し外務省に送付
⑤ 外務省は在外選挙人証を在外公館に送付
⑥ 在外公館は申請者に交付
外務省のHPでは、この一連の流れに「2か月程度」要すると記載されています。今回の参議院選挙における在外選挙人登録の最終は、投票日の6日前の7月4日ですので、いま在外選挙人登録をしていない人は、既に投票できないことになります。
出国してすぐに手続きをすれば良いという意見もありますが、環境が大きく変わり様々な手続きが必要な中で、在外選挙人登録のことを頭の中に入れている方は限られているのが現実です。上記の手続きを以下に迅速化するかが大きな課題だと考えます。
この問題意識は、外務省、総務省も同様に持っており、迅速化や利便性向上に向けた改正が最近行われました。
在外公館申請の際、在外公館に行くことが必須でしたが、令和4年4月1日から、在外公館に行くことなく、オンラインでのビデオ通話を通じ本人確認ができるようになりました。また、申請書類を事前に郵送や電子メールで送付することも可能になっています。
さらに、上記①~⑥の大部分が郵送によるものだったところを、電子メールなどでも可能にできるよう準備していると聞いています。
まだ明確にはなっていませんが、これらが実現することによって、現在、在外選挙人登録をしてない人も、まだ参議院選挙への投票ができる可能性が出てきました。
海外に居住、勤務をしていても、母国・日本での政治参加の機会をつくることは政府として当然のことです。
在外邦人の権利を守ることは、当事者であった私だからこそできることの一つです。引き続き改善に向けた活動を行っていきます。
※2022/06/14 追記
詳細は近日公開された外務省ホームページをご覧ください。
在外選挙人名簿登録の迅速化について
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/ov/page24_001819.html