選挙のたびに、「日本は女性議員の比率が世界的に低い」ことが指摘されます。実際に数字を見ても、衆議院議員の中の女性議員比率は9.7%、世界188か国中165位、世界全体の平均26.1%を大きく下回っています(参議院議員は22.8%、国会議員全体でも日本は153位)。G7(先進7か国)で100位台なのも日本だけです。(IPU<列国議会同盟>調査)
日本において女性の国政進出が進まない要因としては、総論では誰もが女性議員を増やすことに賛成するけれど、具体的に女性議員を始めとする多様な議員の増加の「意味」や「メリット」についてはあまり議論されていないからではないか、と私は感じています。
そこでまず、先行研究をもとに、女性議員が増えることによるメリットを整理してみます。
1. 女性議員の増加と女性政策実現の相関関係
イギリスの研究者が、女性議員比率と女性に対する暴力防止法の強さの相関関係を検証しています。女性議員比率が10%増えると、夫婦間のレイプ、家庭内暴力(DV)、セクハラに関して全面的な防止法が施行される可能性が10%高まるという可能性を指摘しています。(出典:「日本の女性議員」<朝日新聞出版>))
2. 論点の多様化
イギリスの研究者が、フランス議会で2001年~17年に提出された約30万件の法案修正案を分析したところ、男性議員は軍事関連法案に関しての修正案が多かった一方、女性議員は、男女平等を実現するための法案への修正案が多かったことが明らかになっており、男女のバランスの取れた議会の方が、より豊かな社会を実現するための視点や論点が多様化することを指摘しています。(出典:奥山陽子寄稿「日経新聞2021年8月20日付」)
3. 政府支出への影響
アメリカの研究者による数十年の研究成果として、女性議員比率が20~41%になると、教育支出が増加するほか、女性議員比率が15~35%になると、医療支出が増加することが指摘されています(出典:「Political Science Research and Methods」(2022))
4. 議会審議時間の増加
私の大学の先輩である河野太郎衆議院議員の選挙区の、神奈川県大磯町議会は、2003年7月に全国で初めて議員数が男女同数になって以来、今も女性議員の割合は50%以上です。中日新聞の調査によると、女性議員比率が14%だった1983年に比べて、2021年の議会の審議時間は1.7倍になったそうです。「女性も男性もわきまえなくていい」というフラットな雰囲気があるからこそ発言量が多くなっていると分析されています。(出典:2021年4月2日付東京新聞)
以上のように、女性議員の数が増えることで様々なメリットがあることが明らかになってきています。女性議員比率のような、ある水準を超えると一気に全体的な質的変化が起こるという考え方を「クリティカル・マス」と言います。「ある水準」を厳密に数値化することは難しいものの、日本の人口の「半分」を占める女性の声が、国会でも「同じ割合で代表される」ことを目指すべきだと考えています。なお、女性議員の増加は、クオータ制に頼らない形での実現が望ましいと考えています。
私が所属していた国連では、「指導的立場にある女性の割合を50%とする」ことを目標として、より多くの優秀な候補者に応募いただくことで、事務次長以上クラスでは目標を達成、その他の幹部クラスでも女性の比率が40%を超えるまでに増加しました。2028年までには、全ての職位においての女性の割合を50%とすることを目標としています(なお、日本では、社会の指導的地位に占める女性の割合を2020年代の可能な限り早期に30%程度とすることを目標としています)。
私たちが目指すべきゴールは、女性議員の比率をただ上げることではなく、多様な視点を取り組むことによって、より多くの国民に寄り添う政策が実現していくことだと信じています。私も、これまでの経験をフル活用しながら、様々な政策を実現していきたいと思っています。